理学部について

理学部長 教授 木原 伸浩

理学部長
教授 木原 伸浩

「どうして世界はこうなのだろう」:科学に裏打ちされたグローバル化社会の実現へ

理学は、「理(ことわり)=ものの道理」を学び明らかにする学問分野です。人類は、どのような動物とも違う知的な存在です。人間は、目の前に広がる世界を見て、「どうして世界はこうなのだろう」と問い続けてきました。「世界の理」は、人類にとって根源的な問いです。そして、この問いが理学そのものなのです。

理学と科学の違いは何でしょうか。科学とは、教科書に書いてある知識のことではありません。むしろ、教科書に書いてある知識を疑い、それを常に書き換えていく姿勢のことを科学といいます。単なる事実は科学ではありません。事実をどう理解するかが科学です。理学とは、自然や論理など、人間を取り巻く「世界」についての科学です。

理学部には、「数理・物理学科」、「情報科学科」、「化学科」、「生物科学科」の4学科があります。高等学校での数学、理科、情報といった「理系」科目に対応しており、それぞれの専門分野で「世界の理」を学び、研究するためのカリキュラムを用意しています。また、幅広い専門科目を学びたい人、あるいは、まだ専門分野を決められない人には「総合理学プログラム」があります。理学部で学ぶことで、あなたの知的好奇心を確実に満足させることができるでしょう。

現代は科学に基づく技術がものすごい勢いで進歩している時代です。たとえば、私たちは紙の地図を使わなくなりました。GPSシステムを利用したカーナビやGoogle Mapのおかげで、どこにでも簡単に行けるからです。GPSシステムは、有名なニュートンやアインシュタインの重力理論に支えられています。しかし、もちろん、ニュートンもアインシュタインも、GPSシステムのためとか、社会の役に立てるために重力理論を生み出したわけではありません。「どうして世界はこうなのだろう」という問いから重力理論が生まれ、それが世界を変える力を持ったのです。このように、新しい世界は、「世界の理」を問う知的好奇心から作り出されます。

そしてまた、理学部で学ぶ科学的な物の見方は、世界を理解するための指針です。どのような技術も、科学的な素養がなければ正しく用いることができません。そして、科学を深く学び、本質を理解することで、ある分野の技術を全く違う分野に利用するなど、「理」を使って社会に貢献することができるのです。

科学は極めて人間的な営みです。また、科学は全人類に共通の言語でもあります。神奈川大学では、文系を含めた全学部に共通の科目である共通教養科目を設置しています。共通教養科目によって、幅広い教養と外国語の学修を含むコミュニケーション能力を養ってください。科学を基盤とする豊かなグローバル化社会を実現し、それを享受するためには、異なる文化をもつ人々との人間的な交流が必要だからです。そして優れた科学は、奥行きのある教養に裏打ちされることによって初めて可能となるのです。

 

神奈川大学理学部のつくり

神奈川大学理学部には、「数理・物理学科」、「情報科学科」、「化学科」、「生物科学科」および「総合理学プログラム」の4学科1プログラムがあります。4学科によって、数学、物理学、情報科学、化学、生物学、という理学の基礎分野を総合的に偏りなくカバーしていることは、本学理学部の大きな特徴です。

各学科は独立していますが、たがいに強い関係を持っており、全体で一体となって理学の教育に当たっています。この一体感は、他大学にはない、本学理学部の特徴です。それが制度として現れているのが「総合理学プログラム」です。「総合理学プログラム」は本学理学部にユニークなプログラムで、まず各分野の科学の基礎を総合的に学んだ後、3年次から学科を1つ選択し、専門的な科学も学びます。「総合理学プログラム」で学んだ学生が卒業後に教職に就くと、幅広い科学の基礎を十分に生かすことができます。

研究レベルの高さも特筆すべき特徴です。本学理学部は、他大学と比較しても充実した大型機器を揃え、恵まれた研究環境を整えています。これらの大型機器はハイテク・リサーチ・センターにまとめられ、そこから高い評価を受ける研究成果が生み出されています。

神奈川大学理学部のつくり

「どうして?」の心を大切にする理学部での学び

神奈川大学には「理学部」と「工学部」があります。「理学部」と「工学部」の違いは何でしょう? 多くの私立大学には「理工学部」がありますから、みなさんは「理学部」と「工学部」の違いを意識したことが無いかもしれませんね。

ある問題が起こったとき、「理学部」は「どうしてそういう問題が起こるのだろう?」と考えます。「工学部」は「どうやったらその問題が解決できるだろう?」と考えます。これが「理学部」と「工学部」の違いです。「外国語学部」では「その問題を○○語でどのように伝えようか?」と考え、「法学部」では「どういう法律でその問題を規制できるか?」と考えるように、学問分野によって問題への取り組み方は異なります。

「理学部」と「工学部」の違いは、科学と技術の違いだと考えることもできます。科学は「理学部」に、技術は「工学部」に対応します。

「科学技術」という言葉がありますが、科学と技術は異なるものです。科学は「どうして世界はこうなのだろう」という問いそのものです。それに対して、技術は何らかの必要を満たすためのもので、必ずしも科学に基づくものではありません。たとえば、日本刀の製造技術などがそうです。しかし、科学的な知見を利用すると技術は極めて速く進歩します。たとえば、情報技術などがそうです。このような、科学に基づく技術のことを科学技術と称します。

18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命と、その後に続く科学技術の発展は、科学技術が世界を大きく変えることを示しました。私たちの豊かな生活は高度な科学技術に基づいています。その科学技術の基本となる科学は「どうして世界はこうなのだろう」という純粋な好奇心によるもので、役に立つことを目的とするものではありません。したがって、科学の進歩は、必ずしも技術の進歩に結びつくものではありません。しかし、革新的な技術は、何らかの科学の進歩によってのみ可能です。忘れられていたような科学的知見によって技術に革命が起こることも珍しいことではありません。豊かな科学の土壌があって、はじめて、技術という花が咲くのです。

「どうして世界はこうなのだろう」というような個人的な好奇心が社会の「役に立つ」ことなどないように思うかもしれませんが、実は、科学の進歩を通して世界を豊かにしているのです。自信を持って好奇心を全開にしてください。

本学理学部では自分の専門分野だけではなく、いろいろな分野の科目を横断的に履修することが可能です。皆さんが抱いているさまざまな「どうして?」という疑問に対して、それぞれの専門分野から違った答えが得られるでしょう。その答えは、さらに一歩進んだ「どうして?」という疑問を生み、その疑問は大きな発見につながっていくでしょう。そしてその発見は、すぐにではなくても、私たちの世界を大きく変える進歩をもたらすかもしれないのです。

理学部が目指す成長支援:卒業生-新入生=∞(無限大)

神奈川大学では、全学で「成長支援第一主義」を中心コンセプトとして掲げています。理学部では、学生の成長を支援するために、一人ひとりに適した、学力や個性に応じた教育に重点を置いて学修のプログラムを組んでいます。

理学部では、高等学校で履修できなかった理科・数学の科目を学ぶために、あるいは、苦手だった科目を復習するために、基礎科目(たとえば「数学基礎」や「基礎生物学」など)として、各科目の高等学校レベルの科目を用意しています。学修支援センターには高等学校での教育経験の長い職員が常駐し、学修の基礎的な部分について、入学時に足りないところがあれば専門教育に支障が出ないように補い、逆に得意な科目については更なる向上の支援をします。

教員が親しみやすく、学生との距離が近いのは神奈川大学全体の特徴ですが、理学部においては特にそのことが言えます。どの授業も、丁寧に手間をかけて行われているのは理学部の自慢です。最終学年になると、全ての学生は研究室に所属し、卒業研究を行ないます。卒業研究では、マンツーマンの極めて密度の高い教育が実施されています。また、教員志望者が教職課程に登録すると、教職課程専門の担当教員がつき、どの大学と比べても丁寧な個別指導が行われます。

これらの丁寧な教育によって、卒業生は入学時に比べると見違えるほどの変化を遂げています。その差はあまりに大きく、無限大としか言いようがないものです。

理学部が目指す成長支援