有機・無機・物化の垣根を越えた新しいものづくりに一緒にチャレンジしましょう

当研究室では、世の中の役に立つ物質の開発を目指しています。
これまで世の中になかった新しい分子を作り、分子単体もしくは、水素結合や金属への配位で形成される分子集合体が機能性を最大限発揮できる「形(構造)」を追求します。言い換えれば、優れた機能をもつ理想的な物質を「実体」として創作する活動です。
国内外の他分野の研究者との共同研究で、様々な方面の応用も行っています。自分たちが作った物質が活き活きとはたらくところを見ることができ、「物質の作者」としての醍醐味を味わえます。

現在の主な研究テーマは、光・水・元素に着目したものづくりです。
次世代光デバイス材料の開発、環境中や生体内ではたらく機能性物質の開発、自然エネルギー利用のための新材料の開発、クリーンな化学変換の開発などに取り組んでいます。これらによって、持続性可能な開発目標(SDGs)への貢献を目指しています。

研究活動を通じて、高度な合成のスキルと知識、問題解決能力、プレゼンテーション能力が鍛えられます。最新の分析装置・精製装置にも触れることができます。学会にも積極的に参加・発表します。大学院生は国内外の他の大学への留学の機会もあります(現在はコロナで中断)。

「光り物」が好きな人、次世代の材料を開発したい人、病気の早期発見技術に興味がある人、環境調和型材料や環境調和型反応に興味がある人、化学反応・触媒反応の技術を身につけたい人、装置を触りたい人、企業・大学の研究者になりたい人、理科の教員になりたい人、学会で発表したい人、海外の雑誌に論文を出したい人、有機・無機・物化のどれにも興味がある人、是非われわれと一緒に新しいものづくりにチャレンジしましょう!

新学術研究領域研究「水圏機能材料~ 環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成(2019~23年度)」に参画しており、最先端計測、シミュレーション、デバイス応用、環境・生体応用、放射光や中性子を用いた大型研究施設などの分野の研究者や学生との交流の機会が定期的に設けられています。
*新学術研究領域研究「水圏機能材料」のHPは→こちら

これまでの主な研究成果を下に示します。
さらに詳しくは、発表論文のページも参照して下さい。
神奈川大学の広報誌 PROUD BLUE (vol. 7) に辻教授のインタビューが掲載されています。そちらもご覧下さい [PDF]


これまでの主な研究成果

"Solvent-Dependent Growth of Rigid Styrylstilbene Dicarboxylic Acid Microcrystals as Bent Waveguides and Microlasers"
Adv. Photonics Res. 2023年(筑波大・山本教授らとの共同研究)

長谷部駿也さん(2016年学部卒)らが合成した剛直平面構造炭化水素分子COPVのジカルボン酸が、水素結合によって一次元ネットワーク構造を形成することを見出しました。結晶化の溶媒を変えることで結晶の形状が変化し、形状に応じて結晶レーザー光源や光導波路という異なる応用ができることがわかりました。→ 論文を見る


"Preparation of 2,3-Dibromo-1H-indenes and Tetrabromodihydro-s-indacenes as Synthetic Building Block"
J. Org. Chem. 2022年

岩田啓佑さん(大学院在籍中)が、インデンとインダセンという炭素骨格の形成方法を開発しました。インデンやインダセン骨格上に置換基を自在に導入できる点が特徴であり、この反応を用いることで、これまでの方法では作れなかった高効率発光性分子などの合成が可能になりました。この反応をもとに、さらなる新しい材料の開発に現在取り組んでいます。→ 論文を見る


"Single-crystalline Optical Microcavities from Luminescent Dendrimers"
Angew. Chem. Int. Ed. 2020年(筑波大・山本教授、九州大・アルブレヒト准教授らとの共同研究)

Colin Herzbergerさん(クラウスタール工科大学からの短期留学生)と佐藤雄治さん(2019年修士卒)らが合成した、剛直平面構造をもつ炭化水素分子COPVと樹状部位(デンドロン)が連結した巨大分子のマイクロ結晶からレーザー発振に成功しました。樹状部位が光アンテナとして機能することで、COPV部位に効率的にエネルギーが捕集され、マイクロ結晶がキャビティとして働くことでレーザー発振が起こることがわかりました。微小レーザー光源や、光回路、化学・バイオセンシングへの応用が期待できます。→ 論文を見る
関連リンク:神奈川大学プレスリリース日本の研究.com


"Coherent Resonant Tunneling Electron Transport at 9 K and 300 K through a 4.5 nm Long, Rigid, Planar Organic Molecular Wire"
ACS Omega 2018年(東工大・真島教授らとの共同研究)

剛直平面構造をもつ独自開発分子「COPV」(a)は、分子中を電子が流れるのに理想的な構造をもっています。実際に、電子が分子の中を「どのように」「どれぐらい」流れるかを研究するため、金ナノギャップ電極(b)を使った測定を行いました。解析の結果、分子と電極の接合が何種類かあり(c)、SAuSH型のものでは共鳴トンネルという機構によって電流が流れていることがわかりました。9Kという極低温での観測に加え、300Kという室温付近でもこの現象が観測されました。分子ワイヤで4.5 nmという長距離共鳴トンネルが室温で観測されたのは世界初です。1個の分子で電流のON/OFFができる分子トランジスタなどへの応用が見込まれます。→ 論文を見る
関連リンク:神奈川大学プレスリリース

"Carbon-bridged oligo(p-phenylenevinylene)s for photostable and broadly tunable, solution-processable thin film organic laser"
Nature Communications 2015年(スペイン Diaz-Garcia教授らとの共同研究)

COPV(炭素架橋オリゴフェニレンビニレン)と名付けた独自開発の分子は、高い発光効率と安定性を持ちます。分子の長さに応じて、青色から橙色まで発光色を変えることも可能です。これらの性質を利用して、有機固体レーザーの発光材料へと応用したところ、レーザーの高効率化・長寿命化に成功しました。特に、橙色発光を示すCOPV6という材料を用いた場合には、低い閾値、高い利得係数、空気中での長寿命を実現し、既存の有機色素を凌駕する高いトータル性能を達成しました。→ 論文を見る
関連リンク:JSTプレスリリース


"Electron Transfer through Rigid Organic Molecular Wires Enhanced by Electronic and Electron-vibration Coupling"
Nature Chemistry 2014年(ドイツ Guidi教授らとの共同研究)

COPV分子(図中の黄色い部分)を介した電子移動速度を測定したところ、既存のフェニレンビニレン分子に比べて840倍程度も速くなることを発見しました。高速化の要因としては、COPVの剛直な平面構造に由来して、電子供与体(電子を提供する物質)と電子受容体(電子を受け取る物質)間の電子的な相互作用(電子的カップリング)が増大したことと、非弾性トンネリングと呼ばれる非線形効果が関与していることを示唆する結果を得ました。→ 論文を見る
関連リンク:JSTプレスリリース 解説記事:News & Views (by. J. R. Miller, Nature Chem. 2014, 6 (10), 854–855.)Chemistryworld (RSC).


参画中のプロジェクト

科学研究費助成事業 新学術領域研究「水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成」(2019-23年度)、計画班

終了したプロジェクト

科学研究費助成事業 新学術領域研究「π造形科学」(2015-18年度、公募班)
日本化学会新領域研究グループ「有機化学を起点とするものづくり戦略」(2011-18年)
JSTさきがけ「新物質科学と元素戦略」(2011-15年度)
科学研究助成事業 新学術領域研究「高次π空間の創発と機能開発」(2009-12年度、公募班)