神奈川大学の解析系の教員を中心として「神奈川解析セミナー」を開催します。このセミナー月に1回程度、解析学について神奈川大学の教員だけでなく学外の方の交流の場を目指し、一定のテーマの勉強会、最新の研究成果についてのセミナーを行って参ります。本セミナーにご興味のある方は世話人までご連絡ください。
世話人(50音順)
伊藤 涼(神奈川大学理学部)
鈴木敏行(神奈川大学工学部)
鈴木友之(神奈川大学情報学部)
高橋知希(神奈川大学工学部)
津原 駿(神奈川大学工学部)
中村憲史(神奈川大学情報学部)
松澤 寛(神奈川大学理学部)
山崎教昭(神奈川大学情報学部)
吉田 稔(神奈川大学情報学部)
次回予定
第4回 2025年01月20日(月)16:00-18:10
- 16:00-17:00 講演者1:津原 駿氏(神奈川大学工学部)
- 講演タイトル:一般化非線形項を伴うSobolev臨界非線形Schr\"odinger方程式系と対応する定常問題の解析
- アブストラクト:本発表では, 非線形Schr\"odinger方程式系の内, エネルギー構造を保つ最も一般的な非線形項を伴う問題を考察する.
本問題は, Raman散乱効果やManakov系といったモデルを全て包含しており, 近年 Noguera--Pastor(2020-2022)ら
やMasaki(2022)によって, Sobolev劣臨界下での定常解の構造や, 初期値問題の適切性・時間大域挙動が解析されつつある.
本発表では, Sobolev臨界問題を考察し, 基底状態解の一意存在性と初期値問題の時間大域適切性に関する結果を述べる.
証明の方針は, 定常問題・初期値問題をエネルギー汎函数の最小化問題へと帰着させ, 連立系のプロファイル分解を用いて解析することである.
特に, Schr\"odinger方程式系を基準にしたプロファイル分解を新たに構成し, 連立系の臨界問題を統一的に扱えることを中心に述べる.
本発表の一部は, 小川卓克氏(早稲田大学)との共同研究に基づく.
- 17:10-18:10 講演者2:中村 憲史氏(神奈川大学情報学部)
- 講演タイトル:Hyperbolic Stokes equations in 3D domains
- アブストラクト:古典的なNavier-Stokes方程式の数学解析はLeray (1934)に端を発し,今日に至るま
で膨大に行われている.一方,非圧縮性マクスウェル流体の運動方程式として提唱さ
れている双曲型Navier-Stokes方程式の数学解析はRacke, Saal (2012)により始めら
れ,小さな初期値に対する時間大域解の一意存在などが初期値問題に対して示されて
いる.しかし,境界値問題に関する結果は見当たらず,その結果が期待されている.
本講演では,双曲型Navier-Stokes方程式の境界値問題を解析する際に必要な,線形
問題に関して得られた結果を紹介する.本講演は久保隆徹氏(お茶の水女子大学),
小林孝行氏(大阪大学)との共同研究に基づく.
開催記録
第3回 2024年10月18日(金)17:10-
- 神奈川大学横浜キャンパス 20号館214(2F)
- 講演者:高橋 知希氏(神奈川大学工学部)
- 講演タイトル:Navier-Stokes flow in the exterior of a moving obstacle with a
Lipschitz boundary
- アブストラクト:無限遠まで広がる3次元非圧縮粘性流体の中で,境界がリプシッツ
連続な剛体が回転と並進を伴う運動をしているとする.このとき,流体の運動は外部
リプシッツ領域上のNavier-Stokes方程式により記述される.定常解の安定性といっ
た非線形問題の解析では,付随する線形化方程式の解作用素の評価,すなわち,半群
の $L^q-L^r$ 評価が役割を果たす.しかし,外部領域においては,評価の導出自体が非
自明な問題となり,剛体が静止している場合には,最近,Tolksdorf-Watanabe (2020)
,Watanabe (2023)により導出された.本講演では,剛体が運動する場合に
付随する半群の評価及び,Navier-Stokes方程式の時間大域解への応用について紹介
する.本講演は渡邊圭市氏(公立諏訪東京理科大学)との共同研究に基づく.
第2回 2024年08月05日(月)17:10-
- 神奈川大学横浜キャンパス17号館 402(4F)
- 講演者:伊藤涼氏(神奈川大学理学部)
- 講演タイトル:Young 測度入門—積分汎関数の最小化問題の視点から—
- アブストラクト:積分汎関数に関数列を代入した量の極限と関数列の極限の関係を考える.適切な空間での
関数列のコンパクト性と汎関数の連続性の問題は,積分汎関数の最小化問題でしばしば議論
の要となる.L. C. Young が1937 年に導入したYoung 測度は上記の問いに1 つの解答を与
える.被積分関数が非凸なとき,積分汎関数を最小化する関数は存在しないことがある.こ
のような状況においては,汎関数の最小化関数列は微細に振動して $L^p$ 空間の意味で強収束
しない.一方で弱収束では微細振動の情報が失われてしまう.本論の前半では,関数列の微
細な振動が引き起こす現象について考察し,後半でYoung 測度の概説を試みる.非線型汎
関数は,関数の関数ではなく測度の関数と捉え直すことにより線型化できる.この視点にお
いては関数解析の理論が積分汎関数に適用できるのである.
第1回 2024年05月14日(火)17:10-
- 神奈川大学横浜キャンパス20号館 220(2F)
- 講演者:山崎教昭氏(神奈川大学情報学部)
- 講演タイトル:微分方程式と非線形発展方程式論
- アブストラクト:
本講演では,実ヒルベルト空間上で定義された時間依存劣微分作用素により支
配された非線形発展方程式論について考える。前半では簡単な微分方程式を例に
とり,数学的に未解決問題を考察する重要性について考える。また,凸解析の基
本的な事項について確認する。後半では,実ヒルベルト空間上で定義された時間
依存劣微分作用素により支配された非線形発展方程式の可解性などについて紹介
する。時間があれば,非線形発展方程式論の更なる発展について考え,最近得ら
れた結果やその応用について紹介したい。