Title:
ソフトウェアの仕様化作業における会話構造の分析
Authors:
海谷治彦, 佐伯元司.
Source:
電子情報通信学会技術研究報告
KBSE92-9, Vol. 92, No. 128, pp. 25-30, Jul. 1992. 知能ソフトウェア工学研究会.
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実際のソフトウェア仕様化/設計過程の記録をとることは, その過程で
得られた仕様書を理解する際の助けになるという利点がある.
さらに種々の記録を集め, 分析することにより,
- 過程中の作業段階の難易度といった評価尺度.
- 仕様書などの成果物の品質に関する評価尺度.
を求め, 過程の改善や成果物の品質改善に役立てることができると思われる.
本研究では, この仕様化/設計過程の記録を分析し, 仕様書の品質に関する評価尺度を
設定し, 実際の過程の記録の評価を行なった.
仕様化/設計過程には数多くの作業形態がある中で,
本研究では, 複数の作業者が会議を通して仕様決定を行なう形態を分析対象とした.
なぜなら, その作業形態が
仕様化/設計過程の中で重要な役割を果たし, また,
観測できる中間情報を数多く含んでいるからである.
会議における会話では, さまざまな話題が提案され,
何度も繰り返し議論されるものもあれば, 提案されたまま顧みられないものもある.
数多く議論されている話題を含む仕様書の部分は高い品質を持つと予想される.
なぜなら, そのような箇所は, 仕様書を設計する過程において,
多方面から検証され, 多くの対案を出しながら検討されているからである.
よって, 会議の発話記録より, 仕様書中のどの部分が多く議論されていたかを
表す評価尺度を設定し, 仕様書との関連を調べた.
% 従来の研究の問題点.
ソフトウェア設計過程を記録することのできる
計算機上のツールはいくつか開発されている.
しかし, それらは, 特定の設計方針に基盤をおいた
作業方法を作業者に行なわせており,
作業者自身の設計スタイルが阻害されている可能性がある.
そこで, 我々は,
個々の作業者がソフトウェアの仕様化/設計作業を行なうのに,
できる限り作業者自身の思考や作業を保持できるように記録する方法を選び,
その記録に対する分析を行なった.
つまり, 本研究ではツールを用いて記録を行なう手法ではなく,
ビデオカメラを用いて記録を行なう手法を採用した.
我々と同様に, ソフトウェア開発における
作業者自身の設計スタイルを重視した形で記録をとり,
その分析を行なった事例もいくつか存在するが, 本研究の目的とは異なっている.
我々は, ソフトウェア設計過程を分析するための枠組としての研究を続けており,
それには, 個人作業を対象としたものや,
グループ作業を対象としたものがある.
この報告は, その研究の一貫である.
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