神奈川大学理学部化学科
菅原研究室


<動画ギャラリー>

A. 人工複製系

  1. 養分内包型のジャイアントベシクルに外部から膜分子の親水部を添加した際に現れるベシクル自己生産ダイナミクス。

     画面に映っているジャイアントベシクル(粒径10 μm)には、油滴状の膜分子の原料(膜分子の疎水部に相当する)が内封されている。このベシクルは外部からもう一つの膜分子の原料(膜分子の親水部の相当する)を取り込み、内部の油滴の表面で脱水縮合により膜分子を合成する。すると、膜分子は自己集合化して娘ベシクルを形成し、それらを外膜から放出することで、ベシクルの数が増え自己複製が起こる。


    微分干渉顕微鏡像,多重膜ジャイアントベシクル(粒子径50マイクロメートル),20倍速編集.

  2. 多重膜ジャイアントベシクルに膜分子前駆体を添加すると引き起こされるベシクル自己生産ダイナミクス

     粒径10 μmほどの多層膜ベシクルが, 膜前駆体の添加により徐々に括れ, 二つに分裂する様子。この際, 分裂後のベシクルの大きさが, 分裂前とそれほど変化しないのは,外部から添加した両親媒性の膜分子前駆体が 、ベシクル内でベシクル分子に変換されているためで, この複製製ステムの特徴である。また,分裂によって新たに生じたベシクルは, 親と同じように孫ベシクルを作り出す。


    微分干渉顕微鏡像,多重膜ジャイアントベシクル(粒子径8マイクロメートル),10倍速編集.

  3. 内部でDNAが自己複製したジャイアントベシクルに膜分子前駆体を添加した際に現れる自己生産ダイナミクス

     PCR法を用いて、ベシクル内部でDNAの増幅したベシクル(平均粒径 4μm) に、膜分子前駆体を添加すると、5分以内でベシクルの分裂が連続的に起こる。蛍光顕微鏡で観察すると、ベシクル内部が白く(実際は緑色)光って見えるのは、分裂したベシクルに2重鎖DNAが分配されたことを示している。ベシクル内部でのDNAの増幅とベシクルの自己生産が連動した分子システムが誕生した。


    微分干渉/蛍光顕微鏡像,多重膜ジャイアントベシクル(粒子径15マイクロメートル),4倍速編集.


B. 自律運動系
  1. 界面活性剤(オレイン酸オレート)に覆われた無水オレイン酸油滴の自律運動

     この動画は、水溶液中を自走する無水オレイン酸の油滴(半径100 μm)である。無水オレイン酸からなる油滴をアルカリ性水中に分散させると、その表面で加水分解反応が起こり、界面活性のあるオレイン酸のアニオンが油滴を覆い、その界面活性作用でミクロな水滴を油滴内部に取り込む。取り込まれた水滴(粒径1-3 μm)は、油滴内部に対流を産み出し、これが水溶液を掻くことで油滴は自走する。


    微分干渉顕微鏡像,油滴(粒子径75マイクロメートル),リアルタイム.

  2. 水溶液から取り込んだ両親媒性分子を分解しながら自走する油滴

     この動画は、界面活性剤(養分)が溶解している水溶液中に存在する油滴(両親媒性の酸触媒を含む)が、外水相から取り入れた界面活性剤を加水分解したエネルギーを運動エネルギーへ変換することで自走(毎秒数十μm)する様子を示している。界面活性剤は加水分解されると、電解質と油滴の成分である疎水性分子を与える。油滴内の対流が油滴の推進力になると共に、要らなくなった分解物を、養分を摂取した部位の反対側に運び、そこで外水相へ排出される。したがって、この自走は持続する。

    位相差顕微鏡像,油滴(粒子径25マイクロメートル),リアルタイム.

  3. 自走する2個の油滴の見られる後追い運動

     この動画は上の油滴自走系で、2個の油滴が近傍に存在すると、両者の間の運動に関連が生じる様子示している。自走する油滴の後方には、界面活性剤の加水分解物がたなびいている。後方にある油滴は、界面活性剤の濃度の高い方に自走しようとするが、先行する油滴の廃棄物には界面活性剤は含まれていないので、そこを避ける。その結果二つの油滴の運動に相関が生ずる。


    位相差顕微鏡像,油滴(粒子径55マイクロメートル,20マイクロメートル),リアルタイム.

  4. pH8のオレイン酸水溶液で見られる螺旋状構造体とそのまき直し運動

     これはpH8の緩衝液中で、オレイン酸とオレート(オレイン酸のアニオン)が形成するチューブ状ベシクルが螺旋状に巻いたり巻き直したりする動画である。チューブ状ベシクルが螺旋状に巻いたり、一旦巻いた螺旋を解いたり、他の螺旋と互いに巻きつき合ったり、さらには、螺旋の巻き方向を反転させることもある。この運動の駆動力は、親水部の実効体積が異なるオレイン酸とオレートの局所的な分布の偏りが生み出した歪みの解消によると考えられる。その歪みを解消するのに、それぞれの位置を変えなくても、プロトンを対イオンを交換するだけで相互変換しうるため、構造体の中でも1巻き1秒程度の速さで、巻き直しが起こる。


    1. 長いチューブの巻きなおし:微分干渉顕微鏡像,らせん構造体(太さ10マイクロメートル),リアルタイム.
    2. 太い螺旋同士の絡み合い:微分干渉顕微鏡像,らせん構造体(太さ15マイクロメートル,10マイクロメートル),5倍速編集.
    3. キンクを境に巻きなおし:微分干渉顕微鏡像,らせん構造体(太さ8マイクロメートル),4倍速編集.



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Apr19,2012 Suzuki K.